YouTubeのしたたかな戦略

YouTubeに投稿されたコンテンツに対してメディアが削除要求を出すという動きが相変わらず続いていますが、その発見に人力を使っているところもあるそうです。

WSJ] 時給11ドルでビデオ見放題、YouTubeの違法コンテンツハンター - ITmedia News

"BayTSPでは、著作権を侵害しているコンテンツを探し出すために、20人以上の動画アナリスト(「ハッシャー」と呼ばれることもある)を雇い入れ、動画を視聴させている。"

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0708/09/news050.html


 これに対して、YouTubeは違法コンテンツを発見する技術を投入すると言われていますが、非常に巧妙な戦略が隠されていると思います。

ITmedia News:GoogleYouTube著作権保護ツールについて報告

"このツールは、アップロードされたビデオから幾つかの視覚的要素を抜き出し、著作権保有者が提供した資料と照らし合わせるというもの。自動判別の精度を高めるのは困難であり、システムの高度な調整が必要という。精度をクリアしたら、次はYouTubeの数百万のユーザーをサポートするスピードと規模が課題になる。Googleは現在、このツールのテストで主要メディア企業の一部と協力している。"

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/15/news034.html


 それは、投稿されたコンテンツが違法であるかどうかを自動識別するには、元となる正規のコンテンツを利用するのが最も確実かつ簡単なため『違法コンテンツを発見するために正規のコンテンツを提供してください』というまっとうな要求ができるからです。偽物を発見するためにその偽物の提供場所となっている業者に本物を提供するという不思議な事態になるわけです。となると、どうせYouTubeに正規のコンテンツを渡しているなら、いっそのこと彼らのプラットフォームを使って商売した方が得なんじゃないか、とメディアは考えるかもしれません。実際、米国ではYouTubeに専用チャンネルを開設したメディアは多数ありますし、日本でもスカパーやMXTVが提携しています。

ITmedia News:スカパーがYouTubeにパートナーページ 国内企業初

" Googleとのコンテンツホスティング契約に基づき、スカパーはYouTube上に違法投稿されるスカパーコンテンツについて定期的に監視と削除を行う。"

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/19/news083.html


 YouTubeに提供しなくとも、どうせ偽物を発見するために本物のコンテンツをIP化するならば、それを使って自社で配信しようという動きは進むでしょう。いずれにせよ、コンテンツのオンライン配信が促進されることは間違いないと思います。ここまで考えているとしたら、見事だなぁと感心します。