Googleの勝負所
今日は、梅田さん(id:umedamochio)の記事『グーグルの垂直統合思想』から、Googleの垂直統合ビジネスについて考えてみたいと思います。
『Googleはハードウェア会社でもある』という経営陣の言葉が良く知られている通り、Googleは検索エンジンのコア部分だけでなく、格安PCから成る超並列コンピュータ群やらDBシステムやらを自作していると言われています。
こちらの記事には次の様にあります。
by My Life Between Silicon Valley and Japan『グーグルの垂直統合思想』
まぁ、こういう開発の諸々を考えあわせると、日に日に大きくなっている自ら構築中の超並列分散処理コンピュータ(「情報発電所」)のOSを、グーグルは粛々と開発していると考えればいいだろう。
他のネット企業は、こんなレイヤーには絶対に力を入れない。
もっと上のユーザに近いレイヤーで勝負するのがネット企業だろ、というのがネット産業の常識である。確かにグーグルのシステム・コストは他の企業より安い。グーグルはそこに自信を持ってもいて、競合に比べて最低でも二年、最高五年くらいは進んでいると自負する。
こういった様に、Googleは他の企業は手を出していない層まで、自分達で自作しています。
ここで思ったのですが、Googleの垂直統合の中心部分はどこなんでしょうか?
一般的に垂直統合というのは、何か中心となる層があって、そこを武器に他の層も抑えることで競争力を強くし利益をあげやすくするものです。
規制に守られているとか、デファクトスタンダードを持っているとか、特許だとか、圧倒的な技術やブランドとか、そういう中心となるものを利用して、本来ならば手がけない(手を出せない)部分にまで影響力を広めて行くものです。
例えば、Microsoftの場合、OSがそれにあたります。OSがデファクトスタンダードだから、その上位たるアプリケーション層においても、優位に展開することができ、結果的に垂直に抑えることができるというわけです。
Appleの場合、iPodがすばらしいから、iTunesMusicStoreも流行らせることができます。
TV局の場合、電波という規制に守られた資源を持っているから、コンテンツを自由に流すことができます。
全部、何かしら中心となる層があるものです。逆に、中心以外の層での競争力は必ずしもNo.1でないことも多いです。
そう考えると、Goolgeはどうでしょうか?
検索エンジンの処理速度がすごいから、ハードウェアまで自分達でやることができるのか? ランキングのアルゴリズムがすばらしいから、シェアを取れるのか? どれも当たらずも遠からずといった所だと思います。
確かにどの層でもGoogleはすばらしいし、一般的にはアルゴリズムが注目されたのだけれど、実はGoogleの強さの源泉は上記のハード部分にあるのではないでしょうか。『あちら側にあるコンピュータ・システムの設計』にあるのではないでしょうか。
他の競合はやってこない部分、Googleだけが何故か力を入れている部分。ここにこそ、Googleの中心があるのではないでしょうか。
アルゴリズムは確かにすばらしいです。でもかなり分析されているし、比較的真似しやすいのも確かです。ひとりアルゴリズムを知っている人を引き抜けば近づけます。
でも、Googleのハードウェアはちょっとやそっとじゃ真似できないんです。お金さえかければできる訳でもないし、何人か優秀なエンジニアを雇った位では追いつけません。ComputerScienceのあらゆる層のエキスパートを大量に揃えて、各層の『すりあわせ』作業をやり続けて少しずつ改良していくものだと思います。
ウェブは永遠に拡大し続けていき、それに対応するスケーラビリティがなければ、どんなにすばらしいアルゴリズムを持っていてもいずれ追いつけなくなります。Googleがより低いレイヤーに力を入れる理由は、本当の勝負所がどこかわかっているからなのではないかと思うのです。
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