PC業界の巨人にちょっと待った!

 今日はCNETのインタビューから、Intelのクレイグ・バレット氏とDELLのマイケル・デル氏のコメントについて意見を言います。

IBMMicrosoftのOS(後のWIndows)を採用した際に、そのライセンスを他社製PCにもMircrosoftが提供することを許可した件につて、それがPCの発展を即したか?、という質問です。(Windowsが広まりPCの水平分業化が進むきっかけとなった。)


by Flickr『jpstanley』※Creative Commons


マイケル・デルはこう言っています。

by CNET Japan『パソコン25年の歴史を振り返る--デル氏に聞く』


それ以前は、プロプライエタリな、あるいは半プロプライエタリなPCしか存在しなかったため、ユーザーコミュニティから「一度アプリケーションを開発したらどのマシン上でも動かせるような標準は確立されないのか」という声が高まっていました。

 もし、IBMがPCを厳重にコントロールする方針を採用していたら、市場は今よりずっと小さく、進化のスピードもはるかに遅いものになっていただろうということは言えると思います。また、各パーツはより高価なものとなり、コンピュータ技術が現在のように大きな影響力を持つことはなかったでしょう。でも、IBMMicrosoftがやらなかったとしても、他の誰かが同じことをやっていた可能性もありますね。つまり結局は今と同じことになっていたと。それも十分にあり得たでしょうね。

 1981年に発表されたオリジナルのIBM PCは、当然ながら、極めて重要な意味を持っていました。あのPCが世に出たおかげでパソコン業界は繁栄への道を歩み始め、さまざまな企業がこの業界に参入できたのです。拡張カード、ソフトウェアアプリケーション、あるいはチップセットを開発する企業もあれば、新しい方法でアーキテクチャを拡張し、新しい価値や代替価値を提供する製品を市場にもたらす企業もありました。


そして、クレイグ・バレット氏も同じ様にこう言っています。

by CNET Japan『PC業界の生き字引、インテルのバレット会長に聞く』


PC市場は基本的には水平型の市場です。これが長年にわたってPC市場の強みとなってきました。水平型というのは、コンポーネントごとにプレーヤーが異なるということです。プラットフォームを手がける企業もあれば、ソフトウェアやOS、アプリケーションなどを手がける企業もある。この水平型の性質が、システムのあらゆる階層に競争の原理を持ち込むことになりました。競争ほど技術を前進させるものはありません。


PC業界の巨人たる両社が異口同音に、水平分業による競争促進がPCの発展を即したという趣旨の発言をしていることがわかります。
確かに一般的にもそう言われていますし、事実そうだと思うんですが、『競争が即した→競争はすばらしい』という見方はちょっと違うなぁと思います。

だって、競争してないですよね。むしろ、共創してるんじゃないかと思うからです。
競争によって進歩するっていうのは、競争が実際にどう行われているかを表現できていないと思うんです。本質がちょっと違うなぁと。だって、他社が自社よりすばらしいものを出したからそれに発奮してもっといいものができた訳じゃないですよね。他社にシェアを取られると給料が減ったりレイオフされるから、怖がってより良いものができた訳ではないですよね。他社に勝つことで富を独占しようとして頑張った結果、製品が改善された訳でもないですよね。

実際は、他社のサービスや製品をリバースエンジニアリングしたり、分解したり、学術論文や特許を参考にしたり、ライセンスを受けたり、要するに真似したり助けてもらっているわけです。別に競争に負けるのが怖くてコンチクショーと頑張った結果よくなったわけじゃありません。競争に勝って冨を得ることを目的にしていたらいい製品ができた訳でもありません。むしろ、間接的にコーチングしてもらい、ヘルプを受けて、より良いものができてきている訳です。協力しているんです。

だから、競争に生き残ったものが勝つ。競争こそが発展の源だ、みたいな考えはちょっと危険だし、違うなぁ、と思います。Linuxじゃないですけど、オープンに共創できる環境にした方が、より良い製品ができるという実例もあります。
そろそろ競争至上主義が間違っていたことに気付くいい機会が訪れているのではないか、そんな気がします。


等と思っていたらちょうど梅田さんのエントリに、Linux創始者とも言えるLinus Torvaldsのコメントがありました。

by My Life between Silicon Valley and Japan『Linus is happy』


「From a purely technical standpoint, the open-source methodology is simply superior.」(純粋に技術的にみて、オープンソース方式のほうがとにかく優れている)という考え方が、長い時間かけてやっと「受容・承認」され「認識・理解」された、とLinusは総括する。


競争じゃなくて、助け合っているから、良くなっているんだよと。むしろ、余計な壁(企業の壁、著作権の壁、特許の壁、富独占の壁)を取っ払った方が効率が良いんだよ、と。そろそろ気付きたいですね。