MS vs Appleに見る 垂直統合 vs 水平分業

 今日はMicrosoftAppleiPodに対抗して開発中だと噂される『Zune』に関連して、双方のビジネスモデルの違いについて。

CNET Japanの記事により、このZune東芝が製造するのでは!?、と話題になっています。

by CNET Japan『次第に明らかになるMSのiPod対抗端末「Zune」の姿--東芝がFCCに関連文書を提出』


Microsoftが準備を進めているZuneプレイヤーの姿が次第に明らかになりつつある。連邦通信委員会FCC)に提出された文書によれば、ユーザーはZuneを利用してモバイルソーシャルネットワークを築いたり、近くにいる人に音楽をストリーミングしたりできるという。

FCCに提出された米国時間8月24日付けの文書によれば、Zuneの所有者はDJ機能を利用して最大4台までのデバイスに音楽をストリーミングすることができるという。さらにワイヤレスネットワーク機能をオンにして、他の端末との間で画像のほかに「楽曲、アルバム、プレイリストのプロモーション用のコピー」を送受信できると、この文書には書かれている。

 FCCにこの文書を提出したのは、端末の製造を請け負う東芝だ。

ここでおもしろいのは、単純にMicrosoft VS Appleという構図ではなく、双方の取るビジネスモデルの違いです。

AppleiPodで、端末(iPod)、音楽管理ソフト(iTunes)、プレーヤー(QuickTime)、OS(MacOS)、PC(Mac)、音楽配信プラットフォーム(iTunes Music Store)、著作権管理機能(Fairplay)まで多層に渡って垂直統合モデルを取っています。
(※もちろんWindows機でも利用できますし、一部分離可能ですが、Appleの狙いとしては大筋垂直統合と言えると思います。)

一方、Microsoftの側は、従来は、OS(Windows)、プレーヤー(WindowsMediaPlayer)、著作権管理機能(WindowsDRM)といったソフトウェア部分に特化していた訳ですが、最近はWindowsMediaPlayerを拡張し、iTunesの様に、音楽管理ソフトの機能や音楽配信プラットフォームをも持つ様になってきています。

今回のZuneはそれに加えて、AppleiPodにあたる端末にまで手を広げようとしている訳です。

こうしてみると、ソフトウェア部分だけやっていたMicrosoftAppleに習って垂直統合を進めている様に見えますが、ちょっと違う点があります。

それは、垂直統合の結びつきの強さです。

Appleはご存知の通り、統一されたユーザ体験を重視しているので、デザインはもちろんインターフェースや使い勝手に徹底的にこだわり、多層に渡るサービスを出来る限りシームレスに体験できる様に力を注いでいます。iPodの部品一つ一つはもちろん他社が製造している訳ですが、設計の細部までAppleが規定しているので、これはメーカ製品ではなく、あくまでAppleの製品です。iTunesミュージックストアもそうです。無数の音楽コンテンツホルダーがコンテンツを提供していますが、Appleのスタイル内で協力しているにすぎず、あくまでAppleテイストのサービスになっています。

果たしてMicrosoftがここまでできるかどうか? あるいはこれの重要性がわかっているかどうか? がZune vs iPodの勝負どころだと思います。

東芝をはじめとして多数のメーカにMicrosfotの定める仕様を満たした製品を開発してもらうだけなのか、あるいは細部までMicrosoft自身が踏みこみ、細部まで口を出して、シームレスで統一されたユーザ体験の実現に力を注ぐのか?
Microsoftはこれまで真ん中のOSだけを抑えて、残りの部分はインターフェース仕様を決めて、無数の開発ベンダーに門戸を開いてきました。影響力はもちろんありますが、基本的にはオープンなスタンスで水平分業を進めてきたということです。


さあ、Microsoftはこのスタンスを崩してAppleの様に徹底した垂直統合モデルを取ってくるのか? あるいは、結局、従来通りの(事実上)水平分業的なサービスになるのか?

今のところ、音楽業界においては、Apple垂直統合モデルが成功している訳ですが、PCの歴史と同じ様にオープンな水平分業が勝利する可能性もあります。

さて、Micirosoftの戦略に大注目です。