通信放送融合でどこからイノベーションは起きるか?

最近、通信と放送の融合の議論の中で、『双方向サービス(インタラクティブサービス)』という言葉がよく聞かれます。
通信と放送が融合したら双方向サービスこそが重要なサービスになるだろう、と。
地上波デジタル放送でデータ通信ができる様になったり、携帯端末向けのワンセグ放送が始まったり、インターネットでリッチコンテンツを扱える様になったからです。


では、最高の、理想の双方向サービスとは何でしょうか?


例として、視聴者参加型のクイズ番組やアンケート集計等が言われていますけど、なんかパッとしませんよね。あんまり惹かれません。
クイズ番組に参加できるからって、いちいちTVを買い替えて、わざわざネットに接続するでしょうか? イマイチ訴求力が弱いと思います。


どうしてパッとしたサービス案がないんでしょうか?
Webでは毎日の様に楽しいサービスが生まれて来ているというのに、どうして通信放送融合では画期的なサービスの声が聞こえてこないんでしょうか?


私はそれは、業界の構造に有ると思います。
放送局や電話会社から楽しい双方向サービスは生まれないと思うんです。通信放送融合のイノベーションはWeb業界から生まれると思います。

もちろん、放送局のディレクターやらプロデューサーやら芸能人やら広告代理店というのは、日本を代表する創造力豊かなクリエイターです。
でも、この業界から最高のアイディアは出ないと思います。いいアイディアは出ると思うけれど、最高のアイディアは出ないと思います。

電話会社は通信技術をここまで育ててきた偉大な人達です。私たちが快適にインターネットを利用できるのはこの人達のおかげです。
でも、この業界からも最高のアイディアはでないと思います。


なぜかというと、スピードが違うからです。Web業界の方がトライするための敷居が低いから、次から次へと試行錯誤ができます。
Googleみたいに企画も開発も少人数(あるいは一人)でやってしまえるスーパーマンならば、どんどん新しいサービスを創って試すことができます。
一方、既得権益産業では、物事を始めるのに大きなエネルギーと時間とお金が必要になります。この差は非常に大きいと思うんです。


恐らく平均値を取ったらまだまだ既得権益産業の人材の方が優秀でしょう。でも、業界構造が違いすぎます。インターネットという高速道路とチープ革命に支えられてグローバルにトライ&エラーを繰り返している人達には勝てないと思います。


もちろん、放送業界や電話業界の人もインターネットを使います。子会社を作ってWebでサービスを展開していたりします。
でも、やっぱり違うんです。本当にWebという海に潜って泳いでいる人と、Webを豪華客船から眺めている人くらい違いがあります。
海の底にある宝、海の中にある美しい景色は、実際に潜っている人達にしか見えないと思うんです。


じゃあ、放送業界や電話業界がダメかというと、もちろんそんなことはなくて、成功モデルがわかってきたら、フルパワーでその市場に入ってくると思います。
彼らが入ってくるからこそ、サービスがマスに広がるのだとも言えます。
つまり、向き不向きです。

彼らは先頭は走れないし、走っても迷ってしまう。でも、一度ゴールが見えれば、サービスを広げるのに彼ら程力強いプレーヤーはいないでしょう。逆にウェブ業界だけでは心もとない気がします。

どっちがいいとかわるいではなく、それぞれの業界の良さがあるので、お互いの良さを生かしてサービスを作り上げて行きたいですね、と思います。