インターネット時代の評価方法

 今日は梅田さん(id:umedamochio)の最新作『シリコンバレー精神』シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (ちくま文庫)を読んで思ったことです。

『長いあとがき』にこんな一節がありました。

近未来の方向について、その時点その時点で自分なりの判断を下し(未来から振り返れば間違いだらけであろうとも)、苦しくても断定する表現を心がけてきた。むろん両論併記の誘惑は常にあった。日本では、オプティミズムに基づき道の可能性を描くよりネガティブな問題提起や批判を書く方が、また判断を下すよりも判断を留保し両論を併記する方が、無難で受容されやすいからだ。

 でもあえて判断と断定にこだわったのは、考えたことを行動に結び付けるには、どうしてもそれが必要だったからだ。そしてもう一つ、断定的表現でモノを書き、それが多くの人の目に触れるということは、自らに強い緊張を課すことになる。

梅田さんの文章から強いメッセージ力を感じるのは、この自らの責任による『判断』と『断定』があるからなのだと、改めて気づかされるとともに、両論併記に逃げない強さを感じました。僕自身逃げてしまうこともあるので、その大変さがわかります。決断力を尊敬します。

現在の世の中は検索エンジンによって過去の発言や行動が簡単に見つけられてしまう世界です。将来になって他人に読まれたら都合の悪いものも出てくるでしょう。その中で、敢えて断定する。その場その場の自分の考えをオープンに出す。とてもすばらしいことだと思いました。

リスクを恐れて両論併記したり無難な表現にとどめるよりも、僕は梅田さん的なスタイルの方が好きです。梅田さんが言われている様に、『あとになって、その判断に誤りがあったことに気付いたり、状況が大きく変化したことを認識すれば、考えが変わったことをリアルタイムで発信していくことができる』わけですから。隠すのではなく、前はこう思っていたけど考えが変わったんだよ、ということを伝える術があるわけです。考えが変わるのも間違えるのも当たり前なんだから、恥ずかしがることも消極的になることもないと思うんですよね。それよりも、常に積極的にオープンでいた方がリターンが大きいはずです。

そして、読む方も『一冊の本に静的にまとめられたコンテンツだけで評価されるのではなく、そういう長期的な営みに対して評価されるべきものなのである。』ということなんでしょう。

Delorean by Flickr『willgorman』

今後、ウェブや検索エンジンによって、誰がいつどんな発言をしていたか、それがどのように変化してきたか、という情報を自動トラックすることが可能になってきます。そのとき、それをマイナス評価に使うのではなく、その時点でそういう考えをしていた、ということの価値をしっかりと評価することが大事になってくるのだと思います。

過去を振り返ると、『あんなこと言ってたよ』『全然外れたじゃん』という意見は、世の中にいくらでもあります。アナリストだって、コンサルタントだって、投資家だって、競馬の神様だってそうです。それをあげつらうんじゃなくて、ある時点で、どんな人達がどんな考えを持っていて、それがどんな理由によってどんな風に変化していったのか、時の流れという幅をもって人や企業を評価しなきゃいけない時代になっていくんだろう、と思います。