垂直統合はまちがっているのか?
最近、携帯電話業界の垂直統合が悪だと色々なところで言われていますど、本当にそうでしょうか?
垂直統合をやめるというのは、どのレイヤーをどんなプレーヤーに任せるということでしょうか? それによってどんなことが可能になるんでしょうか? 本当に安くなるんでしょうか? 本当にそれでユーザにとっていい世界ができるんでしょうか?
水平分業の方が良いならばそうなるべきだと思いますが、必ずしもそうとは限らない理由もいくつもある気がしますので、ちょっと考えてみます。
□そもそも完全な垂直統合ではない
- 携帯電話は世界各国の複数メーカ、複数チップメーカ、複数ソフトベンダーが競争して製造
- JavaアプリやBREW等でアプリケーションの作成が誰でも(ある程度)自由
- インターネットにアクセスできるので、どんなサイトの閲覧も可能(どんな携帯サイトの作成も可能)
- キャリアポータルサイトの変更も可能(あまり知られていないけれど)
- フルブラウザ、Javascript、Flash等も利用可能
□携帯電話とPCは社会的な意味合いが違うので、ある程度のコントロールが必要
- 携帯電話はPC以上に利用ユーザ層が幅広(幼稚園児〜老人まで)
- PCの様にネイティブアプリを自由に作れる様になると、ウィルス等のセキュリティが懸念
- 携帯電話や携帯メールはPC以上に社会インフラなので、ミッションクリティカル(運用が重要)
等があるなぁ、と。
垂直統合をやめて水平分業にすると、各層が細かく分かれるので、それぞれの層に参入プレーヤーが増えて競争が促進され、技術やサービスが発展したり値段が安くなる、と一般的に言われています。
けれども、携帯電話業界って、コンテンツやソフトやハードの何から何まで携帯電話事業者がつくっているわけでも、細かく決めているわけでもないと思うんです。つまり、そもそも完全な垂直統合ではないと。
じゃあなんで色々な所から不満の声がでてくるかっていうと、多分、PCと比較してできることが極端に少ないからだと思うんです。で、思うんですが、それって、携帯電話業界の構造が問題なんじゃなくて、携帯電話の機能制限に過ぎないんじゃないかなと。
例えば、携帯電話でPCサイトを見るのってまだまだ不便ですよね。でも、これってフルブラウザを使ってみてもやっぱり不便ですよね。携帯電話業界と関係のないPDAで見てもやっぱり使いづらいです。
ということは、これは携帯電話の画面サイズやIO、UIの問題であって、業界構造の問題ではないんじゃないかなぁ、と思います。
コンテンツ自体はアダルトでも何でも見れるんですから。見づらいというのは、単に機能の問題だと思うんです。
携帯業界構造のせいで実現できていないサービスって何でしょうか?SkypeやIMが使える携帯も既にあります。それが普及していないのは、そもそもサービス性とコストが現在のサービスレベルに勝っていないだけなんじゃないかと。
あと、もう一つ大きな不満は料金面だと思うんですが、日本の携帯電話料金って本当に高いんですかね? データがないのでわかりませんが、各国の携帯料金だけでなく、携帯電話の販売価格や、機能や、普及度や、物価指数まで考慮しないと本当に比較はできないと思うんです。本当に高いんでしょうか? 欧米だと(欧米では高機能な)携帯電話が平気で600ドルとかしてますけど、それを考えると日本っていい方なんじゃないかなぁ、という気もします。なぜなら、海外旅行に行くと、海外携帯のショボさにがっくりするから・・
アップルのiPodは誰にも文句言われていない様に、垂直統合が悪いわけじゃなくて、垂直統合ならではの価値や、そうした方がいい理由があれば、別にそれでいいと思うんですよね。日本の携帯業界が今のままで十分とは思いませんが、単純に、『携帯業界まちがってる、孫さんバンザーイ』みたいな考えはちょっと違うなぁ、と思います。