破壊的技術で利益が下がるようじゃダメ

今日も読んで頂いてありがとうございます。毎日多くの人に見て頂けるなんて、数年前では考えられないことでした。皆が発信して皆が反応する。ギブ&テイクが加速するってすばらしいですね。

さて、今日はジェフ・ベソス(Amazon創始者)のインタビュー記事からです。
Amazonと言えば、Googleと並んでAPIを積極的に公開していることで有名ですが、ECストアとしてのAmazonAPIだけではなく、ストレージやコンピューティングパワーすら提供し始めて話題になっています。

アマゾン、ユーティリティコンピューティングサービスを発表--1時間10セントから - CNET Japan


アマゾン、開発者向けホスティング型ストレージサービスを開始 - CNET Japan


いわゆるSaaS(Software as a Service=ASPみたいの)やユーティリティコンピューティングと呼ばれるものの代表例です。
これについてジェフ・ベソス氏がこう言っています。

「ホスティング型コンピューティングサービスがもたらすもの」:アマゾンCEOが発言 - CNET Japan


"Bezos氏は、Amazonホスティング型コンピューティングとストレージサービスを利用することで、急速にコストを削減し必要なコンピューティングの質を変化させた小規模企業の例を挙げた。

 
たとえば写真共有サイトのSmugMugは、AmazonのSimple Storage Service(S3)を利用することで社員数を必要最小限に抑えることに成功している。

 
このアウトソース型コンピューティングモデルは先行投資を大幅に減額できるため、外部の開発者から好評だとBezos氏は語る。

 
情けないことに、(Web起業者の)時間、エネルギー、資金の少なくとも70%は、バックエンドの負担の重いインフラに注がれているというのが実情なのだ。(アウトソース型コンピューティングモデルを導入することによって)独立の開発者からベンチャー企業まで、誰もが、多大な固定費となっていたものを変動費に移行させることができる」(Bezos氏)"

どのような計算によるものかわかりませんが、コストの70%もがインフラに注がれているそうです。これは非常にもったいない。これがユーティリティコンピューティングによって減らすことができるというわけです。
つまり、今までの自分でサーバを運用したり、ハウジングやホスティングする方法には改善の余地(無駄)があるという意味です。

で、以前から疑問に思っている課題なんですが、『破壊的技術等によって効率化・改善されると無駄が省かれるので市場規模が小さくなってしまう。いいことしているのに、小さくなってしまう。なぜだろう?』をまた思い出しました。

これについては、エントリ『インターネットデフレ』でも色々考え渡辺千賀さん等のアドバイスも頂いたんですが、今日やっとすっきりしました。きっかけを与えれてくれたベソスに感謝です。


つまり、こういうわけです。

・破壊的な技術によって効率化が進むと製品価格が下がるので、業界全体の市場規模(売上高)は小さくなる

・ただし、効率化された以上に製品価格を下げなければ、利益は変わらない。むしろ増える場合も。

・企業が製品価格を下げるのは、下げた方がむしろボリュームが増えてトータル利益が確保できるからなので、製品価格が下がる=トータル利益が下がる、ではない。

・トータルで利益を下げてしまう様な戦略をとった場合、それは値決めが不適切ということ。利益は世の中の価値が増えたという意味で良いことなのだから、儲けられる利益を儲けないのは世の中にとってよくない。

効率化できる破壊的技術ができたからといって、トータルの市場利益を下げる様な値決めは間違っている。


ということではないかなと。ちょっと説明がわかりにくいかもしれませんが、どうでしょうか。

つまり、この例で言えば、ユーティリティコンピューティングで効率化するのはいいのだけれど、それによって市場全体の利益が下がってしまう様ではダメ。せっかく効率化によって安くなったんだから、その分利用者も増えるはずで、それも考慮してトータルで市場全体の利益が増える様な値決めにしないと、単に安く提供しまーす、ではダメ。ということだと思います。


じゃあその適切な値決めはどうやるんだ?、というともちろんそれが難しいわけです。
京セラの稲森氏が”値決めは経営者にとって一番大事なこと”といった様なことを言われていたと思うのですが、それはこういうことだったのではないでしょうか。値決めは市場全体に対して責任があることで、それによって世の中の利益が増えもするし減りもする。自社の利益さえ増えればいいというわけではなくて、市場、世の中の利益を考えるべき。そう思います。