ウェブの『神様の耳』が変わってきた

年末が近くなってくると、色々なランキングが登場します。
ヒット曲ランキングだったり、話題の製品番付だったり、流行語大賞だったり。

さて、インターネットの世界でランキングといえばGoolge等に代表される検索エンジンの結果ランキングですが、これに変化が起きようとしています。

Googleは従来、サイトの内容(タイトル、キーワードの出現頻度、大きさ等)だけでランキングしていた従来の検索エンジンに加えてリンク構造を分析することで、大きな精度向上をもたらしました。
『より多くのより良いサイトからリンクされている程良いサイトである』という相互再帰的な万人投票がPageRankの本質と言えます。

要するに『みんなが良いと思っているサイト程良いサイト』という考えを、リンク構造に注目して計算したわけです。

※もちろん上記に加えて、キーワード情報や、位置、アンカーテキスト、リンク先、リンク元サイトの情報も考慮していると言われており、実際はもっと複雑です。


そして、今後は、『みんなが思っている』かどうかだけでなく『その人がどう思っているか』を考慮したパーソナライズ検索が発展していくと言われています。

それについてYahooJapanの社長、井上さんがこう言われています。

ヤフーが描く、媒体に依存しない「行動履歴分析型」広告とは? - CNET Japan


" まずここで問題になるのは、クオリティ。最近はよくこんなことを言っています。「グーグルが登場するまでロボット検索は使い物になりませんでしたが、お利口な考え方に基づいて検索結果の並べ方を変えただけで、ロボット検索は途端に使えるものになった」と。今のCGMは、こうした初期のロボット検索と同じ状況にあると思っています。

 今あるソーシャルメディアはそれだけで儲かるものではないでしょう。ですから、それそのものにそれほど大きな価値があるとは思っていませんが、「SNSで作り上げられる人間関係図がユーザーの作り出すコンテンツをキレイに並び替える1つの手段として使える」ということには大きな価値があります。ここのところについては、ありとあらゆる手段を使って増やしていかなければならないと思っています。"

SNS等のユーザの嗜好を理解するのに役立つサービスを検索ランキングに応用しようという試みです。とてもわかりやすいアプローチです。

では、ここから何が読み取れるでしょうか?


それは、ユーザのインターネット上での行動が変わってきたので、キープレーヤー・キーサービスに変化が起きているということです。


従来は、インターネット上でユーザが取る行動と言えば、『検索』『ブラウジング』『HP作成』等がメインだったので、これらの行動情報を握っている企業がユーザの行動を把握することができる立場にいました。

例えば、


・検索→検索エンジン、ポータル
ブラウジングISP
・HP作成→検索エンジン(HPをクロールして解析できる)


の様に、Yahoo、Google、AOL等がユーザの行動を把握できたわけです。
特に検索エンジンはユーザがその瞬間に求めているものを自ら伝えてくれるので、『民の声』を自動的に収集できる『神様の耳』を持っている様なものでした。
この動きは今後も変わらないでしょう。ただ、他にも重要なものが少しずつ増えてきました。


最近のユーザは上記に加えて、『SNS』『Blog』『ソーシャルブックマークDigg含む)』『タグ付け』等の活動をする様になってきたのです。

これによって、


SNSSNSサービサ
・Blog→Blogサービサ、Blog検索エンジンRSSアグリゲータ
ソーシャルブックマークソーシャルブックマークサービサ
・タグ付け→画像共有サービス(Flickr他)、動画共有サービス(YouTube他)


等も重要なユーザ情報(マーケティングデータ)を得ることができる様になりました。

井上社長が言う様に、これらのサービスから得られる情報を検索ランキングに応用するのも手ですし、これらの情報そのものが新しい広告・マーケティングサービスに活用できるとも言えます。


そのとき有利になるプレーヤーは誰でしょうか?
検索エンジンの重要性が落ちるわけではないので、Google、Yahoo、Microsoftの価値は続くでしょう。
この中でSNSやBlogで一歩進んでいるのはGoogleMyspace提携、Orkut提供、Blogger買収、Blog検索提供、オンラインRSSリーダー提供、YouTube買収)とYahoo(SNS提供、Blog検索、del.ici.ous買収、Flick買収)でしょう。

ただ、MicrosoftはWindowsVistaでデスクトップサーチをプリインストールしてきます。これはオンラインだけでなくオフラインでの活動も把握できるので、この情報を上手く活用すれば従来は知り得なかったユーザ情報を一気に把握できます。(もちろんGoogle、Yahooもデスクトップ検索は狙っています)


以上の様に、ユーザの行動が変わって来たことによって、また新たなチャンスが産まれて来ていると言えるのではないでしょうか。ウェブの『神様の耳』も色々なところを気にしなければいけないので大忙しです。いや、それを簡単にやってのけたプレーヤーがウェブの神様の様な立場になれるのかもしれないですね。