ネット時代の新聞のありかたは

wanwangorogoro2006-12-18

今日は新聞の在り方についてつらつらと考えてみます。

田望夫さんがこんなことを言われています。

My Life Between Silicon Valley and Japan - 新聞社の将棋担当者への提言: ネット上に長い観戦記を


"新聞というのは発行部数が多い分、一文字あたりの価値(コスト)が高い。よって僕などが執筆依頼を受けるときでも、雑誌よりもさらに制限字数が短い。そういう制約を「当たり前」の前提にして新聞の将棋観戦記というものが書かれている。インターネットにはそういう制限字数のコスト的制約などないのに、その思考の枠が取り払われていないのである。"

将棋の観戦記はある程度の分量がないと良さを理解するのは難しい、新聞はしょうがないけどネットは分量制限ないんだからもう少し長くしよう、というお話です。私は将棋には詳しくないので、その話題は梅田さんの本文を見て頂くとして、新聞の役割について考えてみます。


梅田さんの言う通り、新聞は制限字数が多いので、表現がかなり限られることがあると思います。その反面、読み易さというユーザインターフェースや毎朝物理的に家先まで届けてくれるというユーザへのリーチ力等は非常に強力だといえます。



た、新聞の価値を考えさせられる最近こんな事例がありました。ソフトバンクが新聞の号外を利用してキャンペーン告知を図ったという件です。

[R30]: SBの「号外」プロモーションのメディア的意味


"1つは、昨日発表した(それまでは社外どころか社内でも極秘だった)内容を、すぐさま版におこして印刷し、今日全国の街頭で配布するというこのプロモーション戦略のスピードを実際に可能にできる仕組みを持つマス媒体と言えば、新聞しかないということ。つまり、SBの広告がマス媒体としての新聞の大きな可能性を、世間に改めて認識させたとも言える。

 反面このキャンペーンは、はからずも「新聞の価値はその中身ではなく“情報を半日以内に物理的な手段で全国にばらまき、人々が受容する”という、その媒体の形状」にあることも明らかにしたように思える。ぶっちゃけた話、これが成功したってことは「新聞の号外に“記事”が載ってなくても、それには広告的に十分価値がある」ということを意味しているわけだから。"

特に『人々が受容する』という点がいい指摘だなぁと思います。要するにメディアとして信頼されているから、号外が配られると、なんだなんだ??という雰囲気になって誰もが気にしてくれますよね。単なる広告やキャンペーン以上のリーチ力や信頼度があるわけです。



んなメリットでメリットを持つ新聞で、最近こんな動きもあります。The NewYork Times紙が、新聞の読み易さをウェブでも実現しようとMicrosoftと協力してTimes Readerなるビューワを提供し始めています。以前からβ提供されていたものが、12月になってPR促進しているそうです。XPでも使えない事はないものの、基本的にビスタ対応なので、WindwosVistaの発売日が近づいてきたことが理由でしょうか。

新聞感覚でニュース閲覧 NYタイムズの新しいネット新聞-ITニュース:イザ!


 米ニューヨーク・タイムズ紙がベータ版(試験版)を無償で公開、提供している同紙専用のインターネット上のニュースリーダー(閲覧ソフト)「タイムズ・リーダー(Times Reader)」が、関係者やニュース好きなユーザーの間で強い関心を呼んでいる。これまでのニュースリーダーとは異なり、新聞紙面に近い形で扱いの大きさが一目でわかることなどが特徴。大手新聞社のブランドや編集力を強調した形での新たなネット展開がどう推移するのか、注目されている。"


能についてはこちらのサイトに詳細な解説やスクリーンショットがあります。画像はこちらのサイトから頂いています。

POLAR BEAR BLOG: Times Reader が面白い


"面白いのは、このメモ機能。記事の一部を選択して、このようなメモを付与することができます。メモはキーボードからのテキスト入力に加え、上のスクリーンショットのように、フリーハンドでの入力もできます。「あんま意味ない・・・」とか言わないように。ちなみに当然ですが、このメモ画面の表示/非表示は簡単に行えます。

そして一番面白かったのが、このサーチ機能。普通に「キーワードを入れる->ヒットした記事がリスト表示される」という機能の他に、記事のトピックスを視覚的に辿っていく機能が用意されています。"

単に新聞紙面をそのまま見れるビューワなら20世紀のうちからありましたが、情報を保存し活用する為のメモ機能や検索機能や概要把握機能がある点が新しいですね。



の他、編集者がプロ中プロであるという点や、読者層に、エスタブリッシュメント層やファミリー層が多いことも特徴のひとつだと言えると思います。さあそんな新聞がこれからどうあるべきなのか、ネット自体の使い方が変化している状態なので、答えはまだまだこれからだと思います。引き続き新聞に注目していきたいと思います。



■追記
書き終えた後に、佐々木俊尚さんの記事をみつけました。新聞以外だけでなくメディアに対する分析がとてもおもしろいです。是非。

CNET Japan Blog - 佐々木俊尚 ジャーナリストの視点:「これを読めばすべてわかるっていうブログはないんか?


"冷静に考えれば、産経NetViewの失敗理由は明らかだ。新聞という紙のメディアが好きな中高年は、わざわざ紙のメディアをパソコン画面で見たいとは思わないし、30代前半以下のネットの世代にとっては、新聞の記事なんていうのは新聞社のサイトでマイクロコンテンツ化されたものを読めばいいわけであって、わざわざ紙のイメージのものを読むメリットはまったく感じていない。つまりはNetViewは明らかにマーケティングに失敗しているというか、いったいどのような読者を想定したのかさっぱりわからないサービスだったのだ。
"