オープンソース間違えてない?

年末年始はいっぱい本を読んだので、今日も本の話題を。
ITジャーナリストとしてCNETやITmediaでも有名な佐々木俊尚さんの『ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか』です。

ドキュメンタリー形式でまとめられており、ここ数年のインターネット業界のみならず、80年代からのIT産業の歴史を『ネットvs.リアル』という視点で書かれています。まず、読み物としてエキサイティングなのはもちろん、IT史の勉強や整理になります。大学の情報系学科で参考書として生徒に読ませた方がいいんじゃないかと思うくらいです。こういう情報って知っている様で整理されていないもんだからよくわかっていないことが多いですし。

ネット知識については自信がある人もネット以前のIT史については結構知らないことも多いと思うので、とても興味深いと思います。『ネット以前のITなんて関係ないよ』という意見も若い人の中にはあると思いますが、意外や現在の世界にも様々な形で過去が影響を与えているので未来を考える上でとても役に立ちます。


ちなみに、この本は佐々木さんに御献本頂きましたが、それで褒めているわけではないです。パラパラッと目次を読むだけで読みたくなって言いたいことがわかると思いますので、よかったらどうぞ。



さて、この本を読んで色々思ったことがあるので少しずつ書こうと思うんですが、まずオープンソースOSS)について。MicrosoftWindows支配に対抗するために、政府自らがオープンソースであるLinuxを推奨するという動きを見せたことがありました。日本だけでなく中国も欧州もです。数年前に各国とも電子政府化を進めるにあたって、そのシステムの根幹たるOSが米国の一企業に抑えられているというのは如何なものか、という考えです。また、自国のPC産業が伸び悩んでいたこともあるでしょう。そこで、システムにLinuxを採用し開発者コミュニティの推進に力を入れることにしたそうです。


で、ここがちょっと変だなぁと思ったんです。気持ちはわかるんですが、『オープンソース開発者コミュニティを政府が推進する』ってちょっと違和感があります。先のエントリでも書きましたが、オープンソースって単なる無償の共同作業じゃなくって、好きな人が自由意志でやっているからこその偉業なんですよね。政府がやれといったからとか、お金を支援します、じゃ動かないんですよ。そういうことで渋々(喜んで?)やる人もいるとは思いますが、本質的なOSSのエネルギーがそこにはないと思います。


だから、オープンソースから学ぶべきは、『どうやれば人の自由意志や楽しむ気持ちを価値として世の中に還元できるか』であって、Microsoft対抗うんぬんとか、コストがどうこう、ではないと思うんですよね。英語で言えば、喜んで〜するという『willing to 〜』でしょうか。この『willing to 〜力』を活用するために、例えば、『場所や組織や時間に縛られない労働形式を認める』とか『学校の教育内容を多様化して(いわゆる受験科目の試験点以外にも)様々な価値を社会的に認めるとか』、政府が学ぶべきはそっちの方向ではないでしょうか。頑張れ政府。