ネット時代のエンジニア像
インターネットやコンピュータの世界では、ことさらエンジニアの重要性が叫ばれる。なぜだろうか?
エンジニアが重要なのはGoogleやMicrosoftを見るとわかるけれど、YahooやMySpaceは特別なテクノロジー優位企業ではない。テクノロジーを源泉としてる企業と、そうでない企業の産み出した価値、どちらが大きいかはわからない。
じゃあなんでエンジニア崇拝なんだろうか?
それはきっとエンジニアの方が創造力があるからだろう。技術を知らない人でも、製品やサービスの企画をすることはできる。けれど、技術を知っていた方がその幅が広がる。
例えば、『はてな』がWiiとYouTubeを使って実現した『Rimo』も面白い例だ。YouTubeのAPIを利用して、日本人が見そうなコンテンツだけを自動的に選択してテレに垂れ流してくれる。
はてな、動画サービス「Rimo(リィモ)」を公開
ネットの人気動画を抽出、エンドレスに再生。任天堂「Wii」にも対応
http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatenapress/20070216/1171601466
このサービスは、ウェブの技術やトレンドを知っている人にとっては、とても仕組みを理解しやすいシンプルなものだ。同じものを創れる人も似た様なものを考えた人も世界中にいるだろう。
でも、技術にあまり詳しくな人はこのサービスを思いつけるだろうか? もちろん可能だが、技術を知っている人よりその可能性は低いのではないか。
YouTubeというサービスがあって、APIが公開されていて、ブラウザ上でサービスを実現すればWiiを使ってTVに表示できて、UIはAJAXを使って・・、という様に技術を知っている人の方が思いつく可能性は圧倒的に高いと思われる。
つまり、エンジニアが賞賛される理由のひとつは、企画力が高いからではないだろうか。
しかし、こういった技術寄りの発想は、プロダクトアウト視点として、悪い例になることもある。技術ばかりを重視してユーザにとってあまり役に立たない製品やサービスも世の中には多々ある。ではなぜエンジニアの企画がうまくいくのか?
それは、インターネットやコンピュータの場合は、ユーザのフィードバックを簡単に得て、製品やサービスに反映できるからではないか。従来産業では、製品の開発サイクルもコストも高いし、フィードバックを得る手段も限られていたので、技術視点の製品は的を外すと修正するのが困難だった。
しかし、ネットやコンピュータの世界では、簡単にユーザの声を反映できるし、そもそも完成前にユーザの声を取り入れるβ版という仕組みもある。これがともすると技術寄りになりがちなエンジニアの企画力を補正しているのではないか。
以上をまとめると、要するに、この新しい世界では、エンジニアというのは、企画者でもあり、マーケッターでもあり、アナリストでもあるんだ。だから付加価値が高い。従来産業の企画者やマーケッターやアナリストより、それぞれの仕事を深く知っているのがインターネット世界のエンジニアだ。今まで知ることができなかった情報を把握・分析し、自ら企画し、開発する。
こんな新時代のエンジニアをなんと呼べばいいんだろう? 強いて言えばアーキテクトやクリエイターだろうか。あるいはプロデューサーやディレクターか。 従来のエンジニアという言葉のイメージに縛られると、可能性を狭めてしまう気がする。