足すことで引かれるもの

『Life is beautiful』に、ユーザインターフェースの話として、こんなコメントがあります。

Life is beautiful: ユーザー・インターフェイスの設計に大切なのはデザイン・ポリシー


"何かの「ユーザー・インターフェイス」を決める時に大切なことは、自分なりのはっきりとした「デザイン・ポリシー」を持って、誰が何と言おうと最後までそれをしっかりと押し通すこと。そういう「柱」をしっかりと持たないで作ったものは、往々にして「妥協の産物」になってしまう。

 私が常に心がけていること(つまり、私のデザイン・ポリシー)は、「ユーザー・シナリオを80:20ルールで切り分け、常に80の方(つまり多くの人が使うだろう機能)を最優先にした設計にし、20の方(あった方が良いかもしれない機能、一部の人が必要とするかもしれない機能)は思い切って犠牲にする」こと。"


ごく賛成できるのが、『(あった方が良いかもしれない機能、一部の人が必要とするかもしれない機能)は思い切って犠牲にする』という部分。

サービスや製品の設計をしている人は頷く部分がすごく多いと思う。僕なりの哲学のひとつに『足すことで引かれるものもある』という考えがある。何かを追加することで逆に失うものもある、という意味だ。

例えば、『シンプルさ』なんてのは代表的なものだ。あった方がいい機能なんていうのはキリがないわけだが、それらを追加していくとシンプルさは失われて、むしろ肝心のメイン機能がつかいづらくなったりもする。当然コストもスケジュールも増加する。これは言い換えれば利益や提供スピードが失われたことになる。

GoogleとYahooのトップページの対比もよい例だ。Googleは検索フォームとロゴだけのシンプルなもので関連リンクも最小限だ。一方、Yahooは検索フォームが既に色々なバーティカルサーチのタブを含んでいるし、カテゴリが山ほどある。人によっては『Yahooは検索フォームもあるのだから、加えてカテゴリも持っているYahooの方が便利じゃないか』という意見の人もいるだろう。しかし、このデザインによって、Yahooからはシンプルさや美しさ、統一感、ノイズの少なさといった大切なイメージが失われている。どっちがいい悪いではないが、トレードオフになっている。


かを足すと必ずそこには変化が起きるので、見方を変えると逆方向の変化もある。その差引を考慮しても足した方がいいのか、とう視点が大切になる。製品やサービス設計における判断基準は、ターゲットや利用シーンであったり、そもそものコンセプトになるだろう。ともすればなんでも足しがちな設計において、足すことによる変化の両面をみておくことが大切だと考えている。