Google vs 科学?

田望夫さんがフォーサイトに書かれた記事がおもしろい。脳科学者の茂木健一郎さんがGoogleについて語った講演から、Googleのロマンティックじゃないアプローチの脅威(効果)を語っている。

新潮社 フォーサイト シリコンバレーからの手紙127 科学者に衝撃を与えた「ロマンティックでない」グーグル


"我々科学者の「ロマンティックな研究態度」が脅(おびや)かされているんだ、いやもう敗れてしまったのではないか。「トンボのように飛ぶ」にはどうしたらいいかを科学者は未だに解明できないが、遥か昔に飛行機を発明し、人類は飛行機会を得た。それと同じことが今「知性の研究」の分野で起きつつあるんだ。お前たち、ロマンティックな研究をいくらやっていても「グーグル的なもの」に負けるぞ、時代はもう変わったんじゃないのか。茂木は若い研究者・学生たちをこうアジった。"

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/web_kikaku/u127.html

My Life Between Silicon Valley and Japan
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070420

是非全文を読まれることをオススメする。


て、ここでいうところの『ロマンティックな研究』を「Science(科学)」、Google的なアプローチを「Technology(技術)」を読み替えたらどうだろう。

大辞林によると定義はこうだ。

科学:
1)学問的知識。学。個別の専門分野から成る学問の総称。「分科の学」ないしは「百科の学術」に由来する。
(2)自然や社会など世界の特定領域に関する法則的認識を目指す合理的知識の体系または探究の営み。実験や観察に基づく経験的実証性と論理的推論に基づく体系的整合性をその特徴とする。研究の対象と方法の違いに応じて自然科学・社会科学・人文科学などに分類される。狭義には自然科学を指す。


技術:
(1)物事を巧みにしとげるわざ。技芸。「運転―」
(2)自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段。また、そのために開発された科学を実際に応用する手段。科学技術。

もう少し平たく言うと、「科学」は自然法則を解き明かす営みで、「技術」はそれを工夫して生活に役立てる手段だ。前者を「ロマンティック」、後者を「Google」と考えるとしっくりくる。


学の方がロマンティックなのは確かにそう思うし、技術の方が役に立つのもそうだと思う。けれども、技術は科学と密接にくっついているものなので、必ずしもGoogleがロマンティックでないとは思わないのだが、どうだろうか。

Googleの検索アルゴリズムには100以上のヒューリスティックス(経験則)が用いられていると聞く。このヒューリスティックスは、人々の行動や心理を解き明かそうとした叡智であり、まさに社会科学や人文科学そのものだ。最先端のComputer Scienceも言語学も用いられている。Googleの技術は多くの科学の上に成り立っていると言えないだろうか。

Googleは量的アプローチがすさまじいので、ともすればマクロ的なことしか考えていない様に見えるが、実際はミクロに役立つヒューリスティックスを徹底的に研究した上で、それをマクロ規模でも実用レベルになる様に工夫している。


言葉遊びをしている様で申し訳ないのだが、同種の研究をしていた者として、検索技術は十分ロマンティックに感じるのだ。