エージェントサービスの落とし穴

 くソフトウェアサービスのひとつの究極進化系として、『エージェント』サービスがあげられる。電子秘書のようなソフトウェアエージェントが、ユーザーの望むことを理解し、先読みし、まさに熟練の秘書や気心しれた奥さんのように、様々な処理を代行してくれるものだ。

 具体的には、Amazonなどでよく知られるリコメンドサービスや、社内システムで使われるスケジューリングシステム、そしてセカンドライフSNSで身近になったアバター等が、その原型サービスだと言われている。これが発展したものがエージェントだと。


 ころが、わたしにはこれが、あり得ないサービスに思えるのだ。なかでも一番あり得ないと思うのは、リコメンドサービスだ。一見、ユーザー個々人の興味関心のあるものを理解し、推薦してくれるというのは、究極のサービスのように思える。しかし、人間というのは、自分で選択したがる生き物なのだ。選択をするからこそ生き物だとも言える。人に薦められてうれしいこともあるが、ウザい場合も多い。その違いは、押しつけ感にある。人は、決定権を自分で持ちたいのだ。誰かがオススメしても、それを選ぶのはあくまで自分、という考え方をしたいものなのだ。

 ここにGoogleの秘訣がある。Googleは検索結果を返すだけ。要求に応じてサイトを返すわけではない。選択肢を提供し、あくまでその中からどれを選ぶかはユーザーに任せている。だから、利用者に不快感はない。多くの検索結果が返されるけれど、あくまでその中から探して答えを決定するのは自分なのだ。見つけるのは自分なのだ。だから、達成感がある。

 検索エンジンの進化系として、パーソナライズドサーチがある。これも先のエージェントサービスに似ている。だが、賢いGoogleは、決してオススメなんかしないだろう。従来通り、あくまで決定権をユーザに残した形で、単に選択肢を与えるはずだ。ちょっとした”あなたフレーバー”は与えるけれど、あくまで、あなたの御意のままに、というスタンスを貫くはずだ。現在のiGoogleは、やはりそうなっている。


 間は、なんでもやってもらって楽をしたい性向を持つが、根本的に、必ず自分で決定権を持ちたがる。エージェント系リコメンドサービスは、ここを理解しない限り絶対失敗する。個人という利己を追求するあまり、逆に、利己面倒(リコメンドウ)にならないように、ご注意あれ!