ロングテール図はもう変わってきている

wanwangorogoro2006-06-14




今日はロングテールについて。

Web2.0の代名詞キーワードの一つとしてすっかり著名となったロングテールの図だけれど、この図はちょっと変わってきていると思うので、そこを考えてみる。

ヘッドとテールの部分を考えてみる。
まず、ヘッド=恐竜の首の部分はヘッドコンテンツと呼ばれ、映像や音楽でいうならば、例えば民放キー局がやっているTV放送だったり、オリコン上位の人気曲だったりする。
そして、テールの部分は、YouTubeにアップされている『さんまのスーパーからくりテレビ』的なものやPodキャスティング等のCGMコンテンツだと言われている。

なので一般的には、

  • ヘッド=プロの有名コンテンツ
  • テール=素人のしょぼいコンテンツ

というイメージを持たれている。

だが、ある程度あたっている表現だと思うのだけれども、ちょっと違う面もあると言える。

ここで、そもそもロングテールの軸は何かを思い出すと、縦軸は売り上げやシェア、横軸はランキングだ。
つまり、ヘッドかテールか?(横軸のどこか?)という観点には、コンテンツのクオリティは関係がない。
プロが作ったハイクオリティなコンテンツでもターゲットがニッチだったりマーケティングが良くないためにテール部分に埋もれているものもあるし、素人が作ったクオリティの低いものでも人気を博してヘッドコンテンツとなるケースもある。

じゃあランキング(横軸)は何で決まるのかというと、それは他人にどれだけ多くの人に利用されているか?、という観点で決まる。
Amazonで言えば売り上げ数ランキングだし、映像や音楽で言えば視聴者数だ。
ここで、Amazonと映像や音楽の世界ではロングテールの意味が変わってくることを指摘したい。
Amazonの場合、ロングテールの横軸はランキングだ。テールコンテンツであってもちゃんと有料である。テールの部分になると本が安くなるわけではない。

だが、映像や音楽の場合、いわゆるテールコンテンツというのは無料なのだ。YouTubeやPodキャスティングの様に。
そして、このテール部分が伸びてきていると共に、テールからヘッドの方へと出世していくコンテンツが増えて行くと言われている。


そうなるとどうなるかというと、

  1. テールが伸びる(テールコンテンツが増える)→儲からない部分が増える
  2. テールが出世する→ヘッドなのに儲からないものがでてくる

とうことになる。


そこで、1『テールが伸びる』の方はまだしも、2『テールが出世する』方は問題にならないだろうか?
ヘッドコンテンツなのに儲からないのである。
つまり、ロングテールの曲線は連続的に書かれているが、実際は歯抜けしている非連続のものになる。
ランキング上位なのに売り上げにならないものが増えてくるのだ。

こうなるとどうなるか? その出世コンテンツよりランキングが低いコンテンツの商売はやりづらくなる。そりゃそうだ。もっと人気のあるコンテンツが無料なのに、お金を払ってもっと人気のないコンテンツを見る人は減るだろう。
例えば、Gyaoの様に従来は有料だったヘッドやミドルコンテンツを無料で提供することが当たり前になってくると、それと同種で有料のものなんて誰も買わなくなるのと同じだ。

海部さん(id:michikaifu)が『放送とネットの融合は「電車男型出世魚」』で書かれている様に、

さらに、こうしたMiddle Tailのコンテンツは、ずっとMiddle Tailにとどまるのではなく、ものによってはトップ・ツアーにまでのし上がることが可能になるかもしれない。これまたテニスの例を引くと、上位に上がると「シード」がつく。シードされると、組み合わせが有利になり、トーナメントで上位に残れる可能性がますます高くなる。現在のネットの仕組みでは、膨大な数のネットの参加者が、人気コンテンツに自動的に「シード」をつけることが比較的容易である。そして、いったんシードされると、ますます注目度が上がる仕組みになっている。チャレンジャー・ツアーでも、どんどん上位シードにあがっていき、やがてATPツアーに上がれるようになっていくだろう。

これを私は、これまた勝手に、「2ちゃんねる→小説→映画・ドラマ」と出世した例にちなんで、「電車男出世魚現象」(長すぎ・・しかし「電車男現象」というと、別のことを指しそうな気がするので・・)と呼んでいる。

今後は、テールやミドルコンテンツの出世が進んでいくと思う。
そうなると、ロングテールの図は非連続になる。今までのモデルが崩れていく。
ロングテール化すると、新しい市場やチャンスができるだけじゃなくて、今のヘッドやミドルコンテンツの在り方が影響を受けてくる。
早めにミドルやテールで経済が回転する仕組みを考えないと大変なことになりそうだ。
ウェブで儲けることが良いことなのかそうでないのかはわからないけれど。



ロングテール図は森祐治さんの『日米で異なる映像配信ビジネスモデルの行方』から頂き、マッシュアップして非連続にさせてもらいました。ロングテールにおけるビジネスについて深い考察をされているので、ご一読を。