インターネットで共創経済へ

今日は、このサイトの人気エントリ『プロならではのブログ』でも書いたブログでの情報公開について考えます。

ブログでも他のサイトでもそうなんですが、本当のプロフェッショナルの言葉がまだまだオープンになっていない思います。その分野のプロの人が自分の最も得意な最前線情報を書いたものがまだ少ないという意味です。
いわゆる『社員ブログ』というものが制限されているので、社員が自社の製品やサービスについて市場と直接対話することがほぼ禁じられています。これが非常にもったいないと思いますし、ウズウズしてしまいます。


単にインターネットを使い慣れていないという人もいれば、職業柄どうしても情報公開できない立場の人もいると思うんですが、情報公開制限が世の中の発展の足かせになっている気がしてなりません。もっと情報をオープンにして議論すればもっといいサービスや製品ができるはずなのに、企業という枠組みから出ることができないので、それができない。すごくもったいない気がします。


現在の世の中は競争経済なので、競合他社に情報を知られたくないため仕方ないのかもしれませんが、競争経済が本当にベストなんだろうか?、とすら感じてしまいます。競争じゃなくて共創経済の方がいいんじゃないかと。これまでは競争の方が世の中が発展したのかもしれませんが、これからは共創ができるんじゃないかと。OSSオープンソースソフトウェア)に代表される様に、インターネットによって経済モデルが変わってきている、変えることができる段階に人類は来たんじゃないかと思うんです。


1999年に、Sun Microsystemsの社員の方が中心となってインターネット時代の企業の在り方をまとめた『The Cluetrain Manifesto』の『95 Theses』という宣言が話題になりました。


・『The Cluetrain Manifesto』(日本語版)


日経新聞出版社さんから本としても出版されています↓

これまでのビジネスのやり方は終わりだ―あなたの会社を絶滅恐竜にしない95の法則

これまでのビジネスのやり方は終わりだ―あなたの会社を絶滅恐竜にしない95の法則

  • 作者: リックレバイン,ドクサールズ,クリストファーロック,デビッドワインバーガー,Rick Levine,Doc Searls,Christopher Locke,David Weinberger,倉骨彰
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本
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7年前に書かれたとは思えない程、この情報規制問題を見事に指摘されています。オープンに市場と対話しない企業はダメになっていくと。↓

by The Cluetrain Manifesto(日本語訳)


13. 市場で起こっていることは、社員の間にも起こっている。「会社」というきわめて抽象的な構成概念は、市場と社員の間に立ちはだかるただひとつのものだ。


14 企業の話す声は、このような新しい情報化された対話の声とは異なる。企業がオンラインでつなぎたいと思っている相手にとっては、その声はうつろで平坦で、非人間的に聞こえるのである。


15 ここ2、3年で、現在の均質的な営業トーク ― 企業理念を述べたり、パンフレットなどで使われている「声」 ― は、18世紀のフランス宮廷の言葉と同じように、不自然で人為的なものと受取られるようになる。


16 既に、強引な売り込み口上や派手な宣伝文句を使っている企業の言葉は、誰にも聞こえていない。


25 企業は象牙の塔から降りて、関係を築きたいと思っている人々に話しかけなければならない。


26 広報活動(パブリックリレーションズ)は公衆とは関係ない。企業は市場を非常に恐れているのだ。


62 市場は広報宣伝担当と話したいのではない。その企業のファイアウォールの向こう側でおこっている会話に参加したいのである。


64 わたしたちは、企業のあなたの情報、あなたの計画と戦略、あなたの最高の意見、あなたの本物の知識にアクセスしたい。4色刷りのパンフレットや、人目を惹くカラフルな、けれど実態は何もないWEBサイトに甘んじたりはしない。


この99年当時はほぼブログはなかった訳ですが、企業が社員による市場との対話を制限することによる弊害を見事に指摘しています。
まさに社員ブログのことを言っている様にすら読めます。情報を規制して本当の声で話さない企業の行く末を案じています。


私はこの考えを更に進めて、市場(ユーザ)だけでなく、これまで競合だった企業とも、もっと会話することによって、共創経済をつくっていく時代が近づいて来たのではないかと思います。敷居は取るべきだと思います。情報を囲い込んでもお金を囲いこんでも最高の豊かさはやってこないのではないでしょうか。オープンこそが、しあわせへの道になるのではないかと思います。



□追記コメント
ちなみに、Sun Microsystemsでは、社員ブログを奨励している様な記事がありました。↓


・ビジネスにおけるブログの役割 - サンのトップブロガーに聞く


Q: 企業はなぜ、従業員によるブログというアイデアを採り入れるのでしょうか。

A:(SP): そうですね。その質問に答えるには、社会がどう変化しているかを明らかにしなければなりません。我々の住む社会は、インターネットの接続性を利用することで変貌してきました。今世紀初頭に「the Cluetrain Manifesto」という独創的な本が出版されました。著者の主張によれば、我々は今まさに、産業の時代から「参加の時代」へのきわめて重要な転換点に差し掛かっています。参加の時代には、メッセージではなく物語が、マーケティングではなく会話が、消費者主義ではなく参加があるというのです。

参加の時代に、自社の偉大さを人々に伝える最適な方法は、その偉大さに貢献している人々に、自分たちのやり方を伝えてもらうことです。従業員に、自分の視点から自分の物語を伝えてもらえばいいのです。それがブログというわけです。

サンでは、これは何千人もの従業員に、日々意見を語れる機能を提供することを意味します。その結果、顧客、サプライヤ、競合企業、およびメディアのすべてが、一人一人の生活について語る従業員の正直な声に耳を傾けることになりました。情報操作を議論することも、マーケティング・メッセージに反論することもできますが、勤勉、知的かつ創造的な個人が意見を伝える正直な声を聞くとき、できることはそうはありません。


こちらでコメントされている『Simon Phipps』さんは、SunのChief Opensource Officerだそうです。さすがにOSSの大家は考えがすばらしいですね。


The Mink Dimension Simon Phipps's view of the Web